管理栄養士のmafiです。
民泊、サロン、子ども食堂などで、食品衛生に関わることをお話しする機会があったのですが、食べ物を提供できる場所を始めようとしたときに、一番最初に立ちはだかるのが、『営業許可』の種類と手続きだと思います。
そこでこの記事では、
- これから営業を始めたい場所が、『飲食店営業許可』になるのか『喫茶店営業許可』になるのかわからない
- 喫茶店をしたいけど、どの許可書が必要?
- ちょっとした食事しか出さないから、許可なんていらないよね
このような悩みを解決できる記事を用意しました。
『許可』と聞くと申請や準備が大変そうなイメージですが、実際はそこまで手間でもありません
営業許可の取得は、飲食店を経営するための登竜門なので、これから申請を考えている方々の参考になればと思います。
『営業許可』の取得は必要→【無しで運営していると罰金】
まず、飲食店を開業しようと決めた場合、『営業許可』を取得する必要があります。
実は、日本の法律では乳製品や、魚、肉類を扱う卸のお店や、菓子やパン製造など34種類の業種について、『営業許可』の取得を決められています。
中でも、一般的な『飲食店』という、食事を調理・提供することを目的とするお店を開業する場合には、下記の、2種類の営業許可から、お店の食事提供の形態や必要性によって選ぶようになります。
『営業許可』の種類
- 飲食店営業許可
- 喫茶店営業許可
この2つの営業許可です。
▼【飲食店営業許可】には、さらなる種類わけも存在しますが、詳しくはコチラ
【飲食店営業許可】と【喫茶店営業許可】の違いとは?
この許可名を目にすると、多くの人が、
- 『喫茶店』だから→喫茶店営業許可?
- 『飲食店』だから→飲食店営業許可?
という想像をされるかもしれませんが、実はそう簡単ではないです。
違いは『食品衛生法施行令』に書かれている
日本には『食品衛生法』という食に関する法律があり、営業許可の違いについても書かれています。
食品衛生法の目的とは
- 食品の安全を確保すること
- 飲食が原因となる危害の防止
- ・国民の健康の保護
この法律の趣旨を現場に落としていく中で、『食品衛生法施行令』という、さらに細かく内容が書かれる法律があり、
ここに、『飲食店営業許可』と『喫茶店営業許可』の違いのポイントが書かれています。
- 飲食店営業:一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフエー、バー、キヤバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業
- 喫茶店営業:喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業
つまり、わかりやすく書くと、
- 提供する食事の中身
- 食事の形態、などによって変わる
ということです。
勘違いしやすいポイント
なので、よく初めて申請をしようとする人が、
- 金額が高い
- 食数が多い、少ない
- メニューの手が込んでいる
などの理由で変わるのでは?と思っている場合があるので、注意が必要ですね。
金額が高い、食数が多い・少ないで営業許可証の種類が変わるのではなく、『何を提供するか』という提供する食事や食品の中身で変わる。
では、『飲食店営業許可』『喫茶店営業許可』の詳しい内容について、見ていきたいと思います。
1.『飲食店営業許可』とは?
まずは、『飲食店営業許可』についてです。
『食品衛生法施行令』第35条によると、
飲食店営業(一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、レストラン、カフエー、バー、キヤバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業)
となっています。
一般的な食事をすることができる、世の中の大半のお店は、この『飲食店営業許可』に入ります。
『飲食店営業許可』でできること
『飲食店営業許可』では、
- 食材を調理し、食事を提供することができる
- 飲み物を提供できる
- 生絞りジュースやお酒をお店で作ることができる
『飲食店営業許可』では、家庭の台所でできることと同じことが、お店の厨房でもすることができるのです。
飲食店営業許可範囲のお店とは?
- 「食事」などの献立を立て、その場で調理また提供し、食べた人からお金をもらっている全ての店(和食店、洋食店、ラーメン屋、居酒屋、弁当屋、ファミレス、ファーストフード店、など)
- カフェと言う名で、メニューにスパゲティやオムライスがある店
- 食事を提供するこども食堂、高齢者の居場所・サロン、認知症カフェ
- お酒OK
このようなお店が、『飲食店営業許可』の範囲になります。
『飲食店営業許可』できないこと
万能そうに見える『飲食店営業許可』ですが、この許可単体では、カバーしきれない分野の飲食店もあります。
それは、
『製造』の行程に重きを置くこと
です。
乳製品、アイスクリーム、総菜など、製品によって営業許可を取らなければならない食品を作り提供する場合は、『飲食店営業許可』だけではなく、『製品の製造許可』も合わせて取得する必要があるのです。
つまり複数の許可が必要ということ
例えば、
- 食事に追加して、テイクアウトの手作りのケーキを売る店(『菓子製造業』許可証が必要)
- 食事に追加して、テイクアウトのその場で調理・提供しているアイスクリーム店(『アイスクリーム類製造業』許可証が必要)
- 肉や魚の専門店で、試食がある程度の店(『食肉販売業』『魚介類販売業』などの許可証が必要)
- コロッケやつくだ煮など、総菜を作って提供する店(『そうざい製造業』の許可証が必要)など
目的が、
『こだわった商品を一から製造すること』 + 『食事の場を提供すること』
であれば、『飲食店営業許可』にプラスして、別の『○○○○業』の許可が必要です。
2.『喫茶店営業許可』とは
では続いて、『喫茶店営業許可』についてです。
『食品衛生法施行令』第35条によると、
喫茶店営業(喫茶店、サロン、その他の設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業)
となっています。
『喫茶店営業許可』でできること
『喫茶店営業許可』でできること、メリットは、一般的にはかなり限られてくると思います。
- 簡単な食事を提供することができる
- 飲み物を提供できる
一見すると普通の内容ですが、
ん?簡単?
そう、気づきましたか?
- 飲み物だけを提供する店
- 軽食(簡単な調理。トーストは可能)を提供する店
- 飲み物と、ケーキやお菓子(自分の所で作った)を提供する店
- カップ式の自動販売機を設置し、コーヒーなどの飲み物を売る
- 飲み物と簡単なお菓子程度、を提供するこども食堂
- 飲み物と簡単なお菓子程度、を提供する高齢者の居場所・サロン
- 飲み物と簡単なお菓子程度、を提供する認知症カフェ
『喫茶店営業許可』では、簡単な食事を提供することができるというのがポイントになります。
『喫茶店営業許可』でいう軽食、簡単な調理とは?
『喫茶店営業許可』では、基本的に調理をすることは範囲に入っていません。
そのため、
軽食、簡単な調理
という言葉が使われていて、多くの保健所が『軽食、簡単な調理』について、
トースト程度は可能
という表現にとどめています。
つまり、『喫茶店営業許可』ではほとんど調理をすることはできません。
なのでもし(調理をしないけれど)食事を提供したいのであれば、
- 既製品を温める
- 既製品をそのまま提供する
- 自分で作ってもらう
などの方法をとらなければならないのです。
喫茶店営業許可=食事禁止ではないけれど、ほとんど調理できない資格です。
『喫茶店営業許可』でできないこと
『喫茶店営業許可』ではできないこと、デメリットとしては、
- 食事を一から調理する
- お酒の提供
があります。
『喫茶店営業許可』がこの条件であれば、『飲食店営業許可』を取得する方が、お店でできることが増えますよね。
なので、
- 飲み物としてお酒も含めて提供する(『飲食店営業許可』が必要)
- カフェ、喫茶店という名前でも、オムライスやパスタなどを調理して食事を提供する(『飲食店営業許可』が必要)
このようなことができるお店を開業したいならば、『飲食店営業許可』が必要ですね。
「喫茶店」と名乗っているお店の9割が「飲食店営業許可」を取得しています
飲食店・カフェを始める前に読んでおきたい【参考書】
駆け出しの飲食店・喫茶店経営者向けの本は、下記の通り。
はじめての人の飲食店開業塾 (まずはこの本から!)
「本は文章ばかりで読みにくい、、、」そんな方に、漫画で書かれているの本がオススメです。
ビジネス書のマーケティング手法も交えながら書かれているので、将来のビジョンが明確になる本です。
「開業マインド」を学びましょう。
小さなカフェのはじめ方: 必ず成功する!お店開業実用BOOK
小さなカフェを開業した実際の体験談まとめ。
コーヒースタンドやロースタリーカフェなど、さまざまなカフェの最新スタイルとともに、お店づくりの工夫や、スペシャルティコーヒーやシングルオリジンへのこだわり、スイーツや焼き菓子などの品ぞろえ、POSレジやサブスクリプション、パブリックカッピングなど、最新の集客方法も掲載されています。
基本的にカフェをはじめたい人向けの開業ガイド本ですが、そうでない人にも店主たちの開業までの話がとても興味深く読めると思います。
店長が必ずぶつかる「50の問題」を解決する本
実際にカフェ経験者の話を求める方へ
いきなり店長になれ、と言われたところから始まり、具体的な悩みに応じて進んでいくので読みやすいと思います。
チームワークやスタッフの理念の共有や重要性など、店長になったばかりの人、これからなる人が、まず最初に読むべき必須の1冊ですね。
『飲食店営業許可』『喫茶店営業許可』の申請場所はどこ?
自分が取得する『営業許可』の種類を決めたら、まずは保健所に相談しましょう。
各市町の食品衛生を担当しているのは、『保健所』の公衆衛生担当課になります。
保健所は市町の人口ごとに管轄が分かれていて、
- 店を開きたい町の人口が50万人以上→その町に保健所がある
- 店を開きたい町の人口が50万人以下→近隣の市町に、県の保健所がある
まずは該当する保健所へ電話で相談をしてみましょう。
「営業許可」申請の手続きの流れと期間
一般的には、
- 事前相談:営業を始める前に相談に行こう
- 営業許可申請:書類を準備し、施設検査日を決めます
- 施設検査:店の責任者立会いのもと、食品衛生監視員が施設基準に適合しているか確認
- 営業許可証の交付:施設検査後、2~3日程度で交付(市町によって違う)
- 営業開始:営業許可証を見える位置に掲げておく
まずは、保健所に相談ですね。
▽手続きに必要な期間についてはコチラ
「営業許可」申請に必要な費用とは?
この「喫茶店営業許可」と「飲食店営業許可」ですが、取得するためにはお金がかかります。
飲食店営業許可:15,000円から19,000円程度
喫茶店営業許可:10,000円から11,000円程度
と保健所によって、料金には差があります。
▽詳しくはコチラの記事で
ただ、この金額は「申請」にかかるお金です。
このお金にプラスして、申請に必要な「食品衛生責任者」「防火管理者」の取得にも、お金が必要となります。
参考:【飲食店営業許可】とは?種類や飲食店を開くまでの流れ、取得方法についてまとめ
カフェを開く営業許可とは?
営業許可の種類について悩んでいる方の中には、カフェの開業を考えている方もおられると思います。
カフェを開業する場合は、
- ・食事を一から作りたい:「飲食店営業許可」
- ・お酒を出したい:「飲食店営業許可」
- ・コーヒー専門店(飲み物だけ):「喫茶店営業許可」
- ・コーヒーとカレーの店(飲み物と温めるだけのカレー【軽食】):「喫茶店営業許可」
- ・テイクアウトしたい:「喫茶店営業許可」「飲食店営業許可」
提供したいメニューによって、取得する営業許可が変わってくるので、注意してくださいね。
▽カフェを開くなら、このような記事もオススメです
参考:自宅でカフェを開きたい!家でお店を開業するための初心者向け5ステップまとめ
参考:カフェ開業セミナーの参加は必要?初心者がプロの知識を講座で学ぶメリット、デメリットとは?
飲食店に関する営業許可が”必要ない”お店の種類とは
飲食店営業許可、喫茶店営業許可は基本的に飲食を行う全てのお店で必要です。
しかし、お店で提供するメニューや料金形態によっては、営業許可が不要なお店もあります。
参考:飲食店営業を始める時に”許可がいらない”お店の業種とは?
まとめ:食事の内容によって、許可書の違いがある
『飲食店営業許可』『喫茶店営業許可』の違いをまとめてみました。
良かったら参考にしてくださいね。
▼ちなみに、最近はやりの「高齢者のサロン」「こども食堂」。
これら福祉目的の食事の提供については、別途基準を設けている市町もあります。詳しくはコチラ。